みなさん、こんにちは。
今回は認知症高齢者ケアについてお話をします。
ご存知のように、日本は高齢化が進行しており、それに伴って必然的に認知症高齢者の割合も増えてきます。
認知症高齢者に限らず、高齢者ケアにおいてよく謳われる「尊厳を守る」という言葉。
この言葉の意味を具体的に考えたことはありますか?
・尊厳を守るってどういうこと?
・なんとなく意味はわかるけど、実際にどうやったら尊厳が守れるの?
・忙しい現場で、そんなこと考えている余裕ないなぁ・・・。
こんな風に色々な意見があると思います。
私は老人看護専門看護師という立場上、「高齢者の尊厳を守る」ことは最優先であり、日々関わる上でもそこは意識してケアをしてきたつもりです。
今回はこれまでの私の関わった患者さんの話も含めながら、「尊厳を守るために具体的に何をしたらいいのか」ということについて述べていきたいと思います。
この記事を読めば「なんだ、意外と難しいことじゃなかった」と思っていただけるのではないかなーと思います。日常的な関わりでちょっとした心がけをするだけでいいのです。
ぜひ最後までお読みください^^
高齢者の話を否定せず受け止める
まず、結論から言うと「高齢者の話を否定せず受け止める」ことが大切です。
認知症高齢者の場合、記憶力が低下していきますので本当のことなのか、作り話なのか判断に迷うことがあると思います。
でも、迷う必要はないのです。
真実がどうであれ、本人にとってはそれが事実だからです。
大事なことは、「なぜ本人がそのような話をしているのか」という、その人の心(精神世界)を知ろうとすることです。そこにケアのヒントが隠されています。
高齢者にとって「過去」の持つ意義を尊重する
高齢者に関わったことがある方ならよくわかると思いますが、高齢者は過去の話をよくします。
認知症になってもそれは変わらず、過去のことを繰り返し話す方が多くいます。
そんな高齢者のお話、みなさん聞いてあげていますか?
先ほど述べたように、それが真実かどうかは探る必要はありません。
繰り返し述べますが、本人にとっての真実を否定せず聞くことが大切です。
高齢者にとって「過去」はどのような意義を持つのか?について、医師である室伏君士の著書にまとめられていたのでここで紹介したいと思います。
(1)現在の自分の状況が不明確になりつつあるため、自分なりに過去に合わせて、思いつきに近い、判断をしていることが多いが、これはその時点で本人ができる生き方の対処である。
(2)高齢者の過去には、その高齢者が仕事や家庭を通して世のため、人のため、家族のために尽くしてきた実績(記憶)がある。
(3)高齢者にとって過去は生きてきた軌跡で、生き方の成果であり、生きがいでもある。
(4)高齢者の過去は、生活史を通してその人のアイデンティティーがあるところである。
(5)過去の生活史の中には、その人が長年かけて培ってきた”その人らしさ”や”得意の技の能力”が隠されていたりする。
(6)過去からの今に至るまで自分が存在していることへのプライドである。
少し分かりづらい部分もあるかもしれませんが、要するに高齢者にとっては「過去」があるからこそ今の自分を保つことができている、とても重要なものだということです。
※参考にした本はこちら↓
高齢者の過去を大切にした関わり方の具体例
ここで、実際の事例についてお話します。
Aさん、80代女性(アルツハイマー型認知症)の方です。
病棟から「尿意の訴えが多くて対応に困っています」ということで介入しました。
事前に以下のことが情報としてありました。
・「しっこ」と訴える割にはトイレに連れて行こうとすると嫌がる。
・「自分は元看護師長だった」と話しているが、実際は師長ではなかったようだ。
Aさんに挨拶をして、会話していくと、情報通り「私は看護師長をしていたのよ」と誇らしげに語る姿がありました。その後、排尿の訴えがあり、「お手洗いへ案内しましょうか?いつもはご自分で行かれているかと思いますが、ここは病院なので勝手が違うので・・・」と提案しました。すると「じゃあお願いしようかしら」とスムーズに応じてくれました。トイレの中で2人だけになったとき、Aさんは「私は師長をしていたのに、今はこんな風に赤ちゃんみたいに何もできないと思われている」と話してくれました。
この場面から、Aさんにとって看護師で人のお世話をしていたことが誇りであり、それが今は逆の立場になっていることに心を痛めているのではないかとアセスメントしました。
そこで私は「Aさん、師長さんだったなんてすごいですね。私たちにいろいろ教えていただきたいです。」と伝えると、笑顔になり「そうねー。色々あったよー。」と嬉しそうに答えてくれました。
Aさんがトイレに連れて行かれることを嫌がったのは、介助されることによる自尊心の低下があったと思われます。でも、現実的には転倒のリスクも高いことから介助することは必要不可欠です。
そこで、声かけの仕方を工夫することが大切です。今回は、Aさんの自尊心を低下させないように、「ここはいつもの場所とは違うから案内させてほしい」と提案をしてみたことでスムーズに応じていただけました。
また、病棟看護師さんは「師長だったって言っているけれど、実際は違うみたいですよ。認知症だから・・・」と私に教えてくれましたが、実際に師長だったかどうかはあまり重要ではなく、大切なのはAさんは「看護師だったことに誇りを持っている」ということに視点を置いて関わることです。
高齢者の尊厳を守るとは、「その人が語る過去を大切にし、その背景にある本人の思い(精神世界)を理解して関わる」ということです。
看護業務が忙しく、丁寧にじっと話を聞くことはすごく難しいこともあるかと思いますが、一人で全て把握しようとせず、関わるスタッフみんなでこまめに話を聞き、それらの情報を統合してアセスメントすることで、関わりのヒントが見つかるかと思います。
明日からぜひ、高齢者が語る話に耳を傾けてみてくださいね。
ではまた♡
オススメの本は楽天ルームにも載せています。参考にしてみてください。
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