高齢者が運転をやめない理由とは?免許返納を受け入れてもらうためのコツ。

高齢者ケア

高齢ドライバーによる交通事故、皆さんも一度はニュースを目にしたことがあるでしょう。
内閣府の報告によると、75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故は、車両単独による事故の割合が高いそうです。
また、死亡事故の人的要因としては、操作不敵による事故が最も多いとの報告があります。

家族
家族

・そろそろ歳だし、免許返納してくれないかなー。。。

・この間もぶつけられたと言っていたけれど、本当は自分がぶつけたんじゃ・・・?

・なんでこんなに頑なに免許を返納することを拒むのだろう?

このような高齢者の家族の声を聞くこともあります。

この問題を解決するためのヒントが書かれた1冊の本に出会ったので、その本からの学びを皆さんと共有したいと思います。
※参考にした本はこちら↓です。

この本によると、高齢ドライバーが運転をやめない理由を理解し、免許返納を受け入れてもらうには10個のキーワードを理解することが必要です。

今回の記事では、高齢ドライバーの事故がなぜ多いのか、事故を起こしながらもなぜ免許を返納することを拒むのか、その理由が見えくると同時に、私たちがどう対応したらいいのかまで解説していきますので、ぜひ最後までお読みください。

【高齢者の運転能力】低下する機能と維持される機能

高齢ドライバーの交通事故は、車の運転を忘れると言うような記憶に関することよりも、多くは加齢とともに認知能力の分配や瞬時の判断速度が低下していることが原因です。

キーワード1:有効視野

有効視野とは、目に入る視野の中心を注視しているときに、そのまわりで意識できる範囲のことをいいます。高齢者の場合、脳の情報処理のスピードが遅くなるために、一定の時間に処理できる情報量が減ってしまいます。その結果、周辺に注意を払う余裕がなくなってしまいます。

キーワード2:分配的注意

分配的注意とは複数の物事に対して同時に注意を向けることをいい、これは無意識に行われるものです。この分配的注意は加齢とともに低下すると言われていますが、慣れている事柄は加齢の影響が少ないことが示されています。

キーワード3:選択的注意

選択的注意とは、たくさんの情報が飛び交う中から、目的に合う情報を無意識に選択して取り入れることをいいます。この選択的注意は加齢によって低下することがあると言われています。経験を積んでいればある程度はカバーできますが、過信は禁物ですね。

キーワード4:手続き記憶

手続き記憶とは、車の運転やピアノの演奏など、意識しなくても行える運動に関する記憶のことです。この手続き記憶は高齢になってもほとんど低下せず維持されます。だから高齢になっても「まだ運転できる」と思い、高齢ドライバーが多いことにつながっているのだと思います。しかし、注意力や身体機能は低下するのでそのことを高齢者には自覚してもらうことが大切です。

高齢者が運転をやめない理由

これだけ事故が起こっているにも関わらず、高齢者が運転をやめないのには理由があります。その理由を理解するためのキーワードを見ていきましょう。

キーワード5:自尊感情

自尊感情とは、自分は価値があるのだと感じること、または、自分の価値についての自己評価です。
運転をすることで自尊感情を保っている高齢者もいます。そのため、免許を取り上げられる=自尊感情の低下につながってしまいます。

キーワード6:自己評価

自己評価とは、自分で自分のことをどのような人物なのか主観的に見たときの評価です。家族から見たら危ないと感じる行為も、高齢者は「自分は大丈夫」と自己評価していることが多々あります。運転もその一つですね。

キーワード7:自己効力感

自己効力感とは、何かを行う場合に、それを適切に実行できるという自信や確信があることです。高齢のドライバーの多くは自己効力感が高い人が多いのかもしれません。

高齢者の気持ちに寄り添いつつ免許返納をしてもらうコツ

先ほど説明した、自尊感情や自己効力感を低下させずに関わることが関わりのコツです。運転免許を返納することが、次に説明する自己否定につながることもありますので、配慮が必要です。

キーワード8:自己否定

自己否定とは、自分には能力も価値もないと考えて生きていることを否定してしまうことです。
高齢者は普段の生活の中でだんだんとうまくいかないことが増えてきます。その上、運転免許まで返納を求められるとなると、ネガティブな気持ちにもなりますよね。その気持ちをまずは理解してあげることが大切です。

キーワード9:プライミング

プライミングとは、先に受けた刺激によって、その後の行動が無意識に影響を受けることをいいます。このプライミングは加齢の影響を受けにくいため、熟練した老職人が作業を行う時の脳の活動力は、素人が同じ作業を行うときと比べて少なくてすみます。つまり、専門分野に習熟している高齢者には、その経験を活かせる作業を任せることで、高いレベルでの活躍が期待できます。運転免許を返納する代わりに、何か高齢者が得意な活動をしていただくことを提案できるといいですね。

キーワード10:熟達化

熟達化とは、長期の経験や実践を通して知識や技能を習得し、有能になっていくプロセスです。
高齢者は、長い人生の中で培ってきた得意分野が必ずあります。この得意分野を見つけ出し、実施してもらうことで生きがいを持ってもらうことができます。

他にも、運転免許を返納してもらうけれど、助手席に乗ってもらって「ナビ」をお願いするのもいいかもしれません。「私、方向オンチだから、お父さん(高齢者)道案内してもらえる?」と頼むと自尊感情も高まるかもしれません。

いかがでしたか?少し難しいキーワードも出てきましたが、一番大切なことは「高齢者の気持ちに寄り添う」ことです。免許返納したくない気持ちに理解を示しつつ、でも危険が伴うことで私たちは心配だということを伝え、返納してもらう。そしてその代わりにできることを一緒に探していくということが大切なことです。

身近にこのような問題を抱えているご家族がいたらぜひ実践してみてください。
また、病院で関わっている患者さんにこのような問題が生じていたら、ご家族にアドバイスしてみるといいですね。

ではまた♡

参考にしている本などは楽天ルームにまとめています。
よかったら覗いて見てくださいね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました