こんにちは。
今回は看護の古典ともいうべき本。
「ケアの本質」(ミルトン・メイヤロフ)を読み解いていきます。
なんせ難しい本なので、何回かに分けて読み進めていけたらなと思っています。
では早速進めていきましょう!
ケアとは・・・?
著者は、序の部分で、ケアすることには「相手が成長するのを援助するという共通のパターン」があると述べています。
「ん?当たり前・・・」と一瞬思ったりもしますが、この言葉には深い深い意味が込められています。
まず「相手が成長する」とはどういう状態をいうのか?
それは相手が他の人々をケアすることができるようになるという状態です。
例えば、入院しているAさんについて考えてみましょう。
入院しているのでAさんはケアを受ける側として捉えられがちです。しかし、そんなAさんのストレングス(過去記事参照)を引き出すケアを提供することで、Aさんが他者のためにケアを提供する側にもなりうるということです。
また、「相手が成長する」ためにはその人が「自分の落ち着き場所にいる」ということが必要だと著者は述べています。この「自分の落ち着き場所にいる」という表現、独特な訳の仕方ですが、「自分らしくいられる場所にいる」という意味合いかなぁと私は解釈しています。
そして、自分らしくいられるために他者(人だけではなく)とのつながりを持たせることがケアすることなのです。
つまり、ケアとは、相手と他者をつなげることにより、自分らしくいられる場所を作り、相手が他者をケアすることができるよう働きかけることだと言えるのではないでしょうか。
少し難しいですが、ここで過去にもあげた事例を紹介します。
Aさんは85歳女性でアルツハイマー型認知症の診断がついていました。
Aさんは施設に入所していましたが、ここ数日落ち着かずBPSD(行動心理症状)が強くなってきたため、認知症治療病棟に入院となりました。入院後もやはり落ち着かず、あちこち歩いたり、大声を出したりしてスタッフが常時一人付き添い対応していました。平日はどうにか対応できるのですが、スタッフの数が少ない休日は対応が難しく、スタッフも頭を悩ませていました。
このAさんに対し、病棟看護師はストレングスの視点を用いてアセスメントをしました。
その結果、Aさんが普段着用している洋服が手縫いであることに気づき、Aさんとの会話から「手先が器用で裁縫が得意」という情報をキャッチしました。そこで、Aさんへ、日中の活動として手先を使った作業を提案したのです。
このような関わりによって、Aさんは落ち着いて自分らしくいられる場所ができ、他者のためになる活動(ケア)を行うことができるようになったのです。
この事例は、著者が述べている「ケア」について具現化しているのではないかと思います。
ケアするときに気をつけたいこと
著者は、ケアするときに気をつけることとして以下のように述べています。
他者を支配する力を私に与え、他者に優越する何ものかを私にそなえさせる一つの関係性の中でではなく、むしろ一種に信頼感の中で、私が他者から必要とされていると深く感じとっているのである。またそれは、私が勝手に望むように他者を所有し、操作するやり方とは正反対のものであって、他者へのケアに置いて信頼され、まかされているかのようなものである。
ミルトン・メイヤロフ,ケアの本質,p21,ゆみる出版,2012.
少し言葉が難しいですが、簡単に言うと、上下関係ではなく「信頼」に基づく関係性の中でケアは行われるものだということでしょうか。
そしてもう1点、注意したいのが、ケアするときにこちら(看護師)の思いで方針を決め、それを押し付けるようなケアをしてはいけないということです。
私が病棟で勤務していた時代を振り返ると、つい忙しさのあまり、こちら(看護師)側の都合で動いてしまい、ケアを提供する場面がありました。そういう時って、患者さんもケアに抵抗することが多かったような気がします。
ここで一つ、思い出した事例を紹介したいと思います。
Bさんは70代男性で、認知症の診断がついている方でした。入院当初から落ち着かず、訴えが多いという印象を持っていました。私が担当した時も、「お風呂に入りたい!!」と話しており、私は自分の業務を優先して考えてしまい、「今は無理なので、あとで入りましょうか。」と説明をしました。Bさんは次第に興奮して叫びだしてしまいました。
私は「Bさん、ちょっと落ち着きましょう。」と声をかけました。すると、Bさんが「落ち着いてって・・・あんたが落ち着きなさい!」と言ったのです。
その瞬間、ハッとしました。私の心の中は穏やかではなかったからです。
著者はケアする上で必要不可欠なこととして「専心」(そのことに心を集中して行うこと)という要素をあげています。
この時の私は、忙しさのあまり、Bさんに心を集中できず、勝手に「今はBさんは入浴しなくてもいい」と優先順位を決めて関わっていたのです。
本来のケアのあり方としては、「なぜBさんは今入りたいのだろう?」とその思いを確認し、現実的に今入ることができるのかどうか一緒に検討し、どうするのかを決定するように関わることなのだと思います。
今目の前にいる相手に「専心」して関わる。
当たり前のようでいてなかなか難しい現状があるのではないでしょうか。
いかがでしたか?
「ケアの本質」のまだまだ序盤ですが、少しは読み進められそうですか?
次回は「ケアの主な要素」について読み解いていきたいと思います。
ではまた♡
楽天ルームにオススメの本など載せています⬇️
![](https://hanako-study.com/wp-content/uploads/2023/05/image.png)
コメント