ケア学〜マージナルな学問〜 その①

高齢者ケア

こんにちは。
今日は私の大好きな「ケア」ということについて学んだことを共有させていただきたいなと思います。

読んだ本は「ケア学 越境するケアへ」(広井良典著)です。

また、ケアについては過去にも何度か書いていますのでそちらも参考にしてくださいね☆
☆過去記事→ケアとは何かコミュニケーションを絶やさない努力

ケアとは「深層の時間」を過ごすこと

著者は、「はじめに」の中でケアについて以下のように述べています。

「ケアされる」相手に対して何かを「する」ことが「ケア」だ、というふうにこれまで当然のように考えられてきた。しかしそうだろうか。むしろその人の言うことを「聴く」こと、あるいは「ただそばにいること」に、ケアのもっとも深い本質があるのではないか。

広井良典,ケア学 越境するケアへ,p3,医学書院,2000.

私はこの文にすごく納得というか共感しました。最近、病棟である場面を見て違和感を感じたことがあったからです。

ある日、病棟ラウンドをしている時、前日に関わったAさん(80代、認知症高齢者)がいたので近寄って声をかけました。するとAさんは前日とは全く違った表情で「オレはもう死にたい!」と言ったのです。私はとても気になったので、その場で足を止めて「Aさんどうかしましたか?」「なんで死にたいと思っているのかお話聞かせてもらえませんか?」と伝え、Aさんの側でしゃがんでいました。Aさんが自分から落ち着いて話すのを待つつもりでそうしていたのですが、その時、担当の看護師さんが来て「Aさん、散歩行きましょうねー」と言って車椅子を押してAさんを連れて行ってしまったのです。
Aさんは車椅子を自走しお散歩するのが好きだったので、担当看護師さんは時間が空いたからAさんのために良かれと思って散歩へ連れ出したのだと思います。しかし、その時のAさんは決して散歩を楽しめる状況ではなかったんじゃないかなと私は思いました。

この場面で私はすごく違和感というか、何かが違う・・・と思いました。
その違和感の原因、それは相手の話を「聴く」ことよりも散歩を「する」という行為を優先したケアに対する違和感だったのだとわかりました。きっと、担当看護師さんからすると、私が黙ってAさんの側にいただけだったので、それが意図的なケアとしての関わりだとは思わなかったのでしょう。

違和感の原因はもう一つあります。それは「主体が誰か」ということです。
この場面で担当看護師が行ったケアは主体がAさんではなく担当看護師にあったのだと思います。
そうではなくて、主体はAさんである必要があったのではないでしょうか?(厳密には主体はAさんと看護師ですが・・・この話はややこしいのでまた今度にします)

話を最初に戻しますが、ケアとは「私と相手」が互いにケアしながら「より深い何ものか」にふれるという経験を含んでいるのではないかと筆者は述べています。つまり、「ともに時間を過ごすこと」。シンプルな表現ですが、ものすごく深い意味が込められていると思います。

筆者は「時間」という概念についても述べていて、ここでいう時間とは「カレンダー的な時間」ではなくて、時間というのは層のようになっていて、奥底にある、ゆったりと流れる時間、つまり「深層の時間」のことです。

患者さんと関わっていて、向き合っているとき、私はまさに「深層の時間」を経験しています。
時間にするとわずか15分〜30分ほどですが、真摯に向き合っているとそのカレンダー的な時間以上のものを経験したような気分になります。

「患者さんとゆっくり関わる時間がない」という言葉をよく耳にしますが、ほんの数分でもいいのだと思います。大事なのは「深層の時間」。単純な時間の長さが重要なのではありません。

人間は「ケアへの欲求」をもっている

「はじめに」の内容だけで深い話が展開しましたが、第1章ケア学の必要性の冒頭で、著者は以下のように述べています。

人間はケアへの欲求というものをもっており、また、他者とのケアのかかわりを通じて、ケアする人自身がある力を得たり、自分という存在の確認をしたりする。このことは、「ケア」ということを考えていくうえで、出発点として確認しておくべきことと思われる。

広井良典,ケア学 越境するケアへ,p16,医学書院,2000.

どういうことかというと、「人のために」と言いながらそれが案外「自分のため」の行動だったりすることがあるかもしれないということです。

どうでしょうか?ドキッとしますが、どこか納得しませんか?

つまり、ケアとは「ケアする側」「ケアされる側」という直線的な一方向の関係ではなく、複雑に関わりあっているものです。
私たちはつい患者さん(特に高齢者、認知症高齢者)を自分より弱い立場の人間だと判断しがちで、私たちがケアを提供しているのだという考え方になりがちです。
でも、実際は患者さんをケアする中で、自分自身が癒されていることもあるのではないでしょうか?
そういう視点でケアを捉え直した時、ケアが変化し、患者さんの言動にも変化が起こるのだと思います。

少し話はそれるかもしれませんが、病棟でよくありがちな現象が、患者さんが怒って興奮している時、だいたいそばにいる看護師も同じように怒っているのです。
負の循環ですね・・・。
それを断ち切るには、こちらから冷静になることです。一歩引いて起こっている現象を見つめ、患者さんの感情を聴くことができれば、必ず患者さんも落ち着きます。(経験済みです。笑)

ケアって本当に面白い!!
そして、このケア学についてまだほんの数ページ分しかお伝えできていないですが、長くなりそうなので続きはまた今度にします。

興味ある方は是非読んでみてください。
「ケアをひらく」シリーズの1冊なのですが、このシリーズの本はどれもとても面白く、勉強になりますよ^^

ではまた♡

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