こんにちは。
今回も認知症に関する内容です。
過去の投稿でも少しお話ししましたが、私が普段、介入する患者さんは認知症で
「(病棟からすると)困った患者さん」がほとんどです。
病棟の看護師さん曰く、「認知症で意思疎通困難」な方です。
でも・・・最近あることに気づいてしまったんです。
結論から言うと「意思疎通困難」ではなく「単純なコミュニケーションのズレ」なのです。
どういうことなのか具体的に解説していきますのでよかったら最後までおつきあい下さい☆
【事例】大声で叫び続け、看護師に手をあげたりするAさん
ある日、病棟ラウンド中にどこからか大声で叫んでいる声が聞こえてきました。
声のする方へ歩いて行くと、そこには車椅子に乗って看護師に手をあげているAさんの姿がありました。付き添っている看護師も「こんなんじゃ、仕事ができない!」と怒っていました。
Aさんも看護師も怒りをあらわにし、対立する一方だったので私が対応することを申し出ました。
私はまずAさんを病室に連れていきました。
そしてAさんを見つめ、自己紹介をした上で、「なんで怒っているのか教えてくれませんか?」
と声をかけました。
病棟看護師からはAさんの情報として、「認知症があって意思疎通がとれない」と聞いていましたが、
Aさんは「なんでって?あなたたちは、僕をすぐ縛ろうとするし、先生たちだってそう。僕の話を聞かないであっち(おそらく電子カルテのこと)ばかり向いて何かしている。」と説明してくれました。
Aさんは意思疎通困難どころか、私の質問に対してきちんと答えてくれました。そして話を聞いているうちにAさんは落ち着き、「でもね、この人たち(病棟看護師)はよく頑張っているのよー」と笑顔で話してくれました。
でもなんで病棟看護師は「意思疎通困難」と判断しているのか?
その答えを探すために私はさりげなく病棟看護師のAさんへの関わり方を観察しました。
すると、病棟看護師はAさんに声かけをするものの、(Aさんが答えるのに時間がかかるため)Aさんが答える前に顔をそらしてしまっていました。また、Aさんが大声で何か言ってもそれが今現在の話ではなかったりするために「意味がわからないことを話している」と判断していることがわかりました。
「認知症=意思疎通困難」ということが刷り込まれてしまっているため、Aさんの声に耳を傾けることをしていないことがコミュニケーションのズレを引き起こしていたのです。
Aさんに限らず、私が関わるほとんどの認知症患者さんにこのような現象が起こっていました。
援助者の思いが引き起こすコミュニケーションのズレ
みなさんも認知症高齢者とのコミュニケーションで様々な失敗体験があると思います。
その失敗の原因として、北川1)は以下のように述べています。
認知症の人がこうありたいと思っているよりも、「こうしてほしい」という援助者側の意図が先行し、目標の不一致が生じてしまうためである。「こうしてほしい」が先行するのは、業務の滞りない進行を優先するあまり、海水面に浮かぶ氷山のように、認知症の人が表現しているメッセージのうちの、目に見える部分にしか注目していない結果にほかならない。水面の下に沈んで見えにくくなっている部分には、その人の悲しみや不安、焦燥感、身体的な不調の感覚、あるいはちぐはぐではあるが保持されている能力などがある。
北川公子,認知症ケアにおけるコミュニケーション,新版 認知症の人々の看護,p96,医歯薬出版株式会社,2013.
耳が痛い言葉だと思いますが、どこか納得するところもありませんか?
病棟で働いていると、どうしても周りのスピードについていくこと、自分の業務をとにかく早く終わらせることに意識が集中してしまうかと思います。
ですが、これは短期的な視点で捉えた考え方です。
長期的に見ると、毎日少しずつ患者さんとコミュニケーションを図ることで、信頼関係を構築することができ、最終的には患者さんも落ち着き、ケアがスムーズに行えるようになります。
ここでいうコミュニケーションとは、何も言語的なコミュニケーションだけではありません。
認知症の方は特に、非言語的なコミュニケーションがとても大事です。
言葉ではなかなかコミュニケーションが取れない患者さんでも、笑顔で目をしっかり見つめるだけでも患者さんは落ち着いてきます。プラス、背中をさすったりすることも安心感を高める上で重要なポイントになってきます。
いかがでしたか?
ここまで読んで「認知症=意思疎通困難ではない」ことは理解していただけたでしょうか?
認知症高齢者とのコミュニケーションについては過去記事にもありますのでよければ併せて読んでもらえると理解が深まると思います。(過去記事→1、2)
今後も、臨床現場での事例を用いながらお伝えしていきますので一緒に学びを深めていけたらいいなと思います。
ではまた♡
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