せん妄のアセスメントとケア〜急性期病院での実際の取り組み〜

せん妄ケア

久しぶりのブログ更新です。

4月からのフルタイム勤務にまだ身体が慣れず、帰宅してからブログを書く気力もなく。

かといって、朝早く起きるのもできず・・・でなかなか書けずにいました。

そして、本を読む時間も減ってきてしまい、ブログのネタがないのが正直なところです(笑)

もう少し仕事に慣れてきたら、心のゆとりが出てくるかと思います。

今は無理せず、できるときにブログを書いていこうと思っていますのでよろしくお願いします。

さて、今回は「せん妄」についてです。

私は急性期病院に勤めていて、認知症の患者さんで困っていることがないかなぁと思って全病棟をラウンドしています。

その中で見えてきたことは、「認知症そのものではあまり困っていない」ということです。

むしろ「せん妄」で困っていることが多い印象があります。

そこで、今回は「せん妄」の基礎知識から、実際の介入の仕方までをお話したいと思います。

せん妄とは

せん妄を一言であらわすと「急性で続発性の脳機能障害」で、さらにいうと「意識障害」です。

「続発性(ある病気に関連して発生する病気や症状)」というように、基本的には原因となるからだの病気があります。

決して脳の病気ではありません。

例えば、身近な例でいうと、アルコールを飲みすぎて酔っ払うことがありますよね?

これはアルコール(薬)で脳の機能が不十分になって意識がおかしくなるから起こります。

つまり、これもせん妄です。

他にも高熱が出たときに、頭がぼんやりして考えがまとまらないなどもせん妄です。

以下にポイントを2つ示します。

ポイント
①せん妄は「からだの病気」。脳の病気である認知症とは根本的に異なる。
②治療の主体は精神科ではなく、からだを診る一般診療科!

認知症と、せん妄はよく間違えられますが、上記の通り根本的には異なります。ただ、認知症の人はせん妄になりやすいというのはあります。

「急に認知症が進行してきた」という言い方をするのをたまに耳にしますが、これはおそらく「せん妄」です。

認知症は急には進行しません。徐々に時間をかけて進行していくのが認知症です。

そして、「せん妄だから精神科コンサルト」ということもちらほら見受けられますが、これは厳密に言えば間違いです。

せん妄が起こっている原因はあくまで「からだ」にあります。

なので、「根本治療は身体状況を治す」ことです。

私たち看護師は、せん妄が起きたらまずは身体状況をきちんとアセスメントすることが必要です。

ここは大事なことなので覚えておいてくださいね^^

せん妄の原因〜3つの因子〜

せん妄の原因には3つの要因があります。

①直接因子:からだの原因・薬
②誘発因子:水分、酸素、日内リズム、ストレス、不快な症状
③準備因子:年齢、基礎疾患など

これら3つの要因を枠組みとして、私たち看護師はこれらの情報をできる限り収集しアセスメントすることが必要です。

そして、誘発因子を可能な限り和らげることが大切です。

直接因子に関して言えば、高齢者の場合、内服薬には注意が必要です。

持参薬の確認をきちんとし、せん妄を引き起こしやすい薬はないか確認し、それを内服する必要性について医師へ確認していけたらいいですね。(これは私もなかなかできていない部分ですが・・・)

先ほど、せん妄の根本治療は身体状況を治すこととお話ししましたが、実際にはここは医師による治療の効果がすぐに出る訳ではないので看護師として関わるには限界があるかと思います。

あとは準備因子に関してもこれは年齢や基礎疾患なので、どうしようもありません。

ですが、誘発因子に関しては私たち看護師が力を発揮する部分かと思います。

脱水状態がある場合は水分補給に気を配ったり、入院環境に馴染めるよう声かけをこまめに行ったり、ストレスが溜まっていないか患者さんの話に耳を傾けたり、気配り一つでできることが多くあります。

また、日内リズムをつけることとして、カレンダーを設置したり、24時間リアリティ・オリエンテーションを行ったりすることも有効です。

※24時間リアリティ・オリエンテーションとは・・・日常的なコミュニケーションの中で、基本的な情報(時間・場所・季節・天気など)を自然な形で伝える方法。例)「おはようございます(朝だということを伝えている)。今日担当します、看護師の〇〇です(ここは病院であるということを伝えている)。」「12時になりましたので、昼食をお持ちしました。(昼だということを伝えている)。」

実際の介入例

最後に、実際にせん妄を発症した事例についての介入例をお話しします。

Aさん、67歳男性。消化管穿孔のため入院。
身体状況は改善には向かっておらず救命病棟に入院中。過去にうつ病も患っており、せん妄のリスクは高いが発症することなく経過していた。しかし、個室に部屋移動をした後からせん妄を発症。夜間眠らず辻褄の合わない言動があり、日中は覚醒が悪い状態となった。

この事例について、身体状況についてはきちんと治療がなされている状況であることをアセスメントした上で、看護師として行なったことについてお話しします。

まず、着目したのは「個室に移動した後から」という情報です。

実際にAさんの病室に行ってみると、3面は壁で、残り1面は窓になっているものの、見える風景は救命病棟のフロアという状況でした。壁には飾りも何もありませんでした。

身体的に問題のない私でも息がつまるようなそんなお部屋でした。

しかし、感染管理上の理由からAさんが個室から出ることはすぐにはできない状況でした。

そこで、すぐにできることとして、1.カレンダーの設置、2.リアリティオリエンテーションの実施を行いました。

Aさんへ「カレンダー見えますか?今日はここです。何日か見えますか?」と確認するときちんと答えることができていました。

また、病棟スタッフにもリアリティオリエンテーションについて説明し、意識的にコミュニケーションをとるよう提案しました。

その結果、その日の夜はせん妄を起こすことなく過ごされ、翌日の日中も覚醒状況が良くなりました。

まだ、取り組んで数日なので今後も経過を見ていく必要はありますが、スタッフが取り組んでくれたおかげでせん妄が落ち着いてきていることを伝え、スタッフのモチベーションも高めながら介入を続けていきたいと思います。

ここで、もう一つポイントがありますが、この方はNGチューブが留置されており抜去予防のためにとミトンが着用されていましたが、スタッフもなるべくは外す時間を確保していましたし、NGチューブが抜去できてからはミトンをすぐに外すなど、スタッフの「抑制しない、したくない」という意識が伝わってきました。この対応もせん妄が悪化せずに済んでいる要因ではないかと思います。

せん妄のときは、抑制することでせん妄が悪化したり長引いたりするため、「抑制しない」ことが一番いいことはおそらくみんなわかっているかと思います。

でも、それがなかなかできない現実があるのも理解できます。ジレンマです。

次は、抑制をしないことでせん妄が長引くことなく改善した事例についてお話しします。

Bさん、80歳女性。消化管出血のため入院。
入院初日の夜、せん妄を発症。もともとADLは自立のため何度も起き上がり、どこかへ行こうとしたりと落ち着かない状態。少し落ち着いたと思ったら、日中に再びせん妄状態となり、「向こうへ行かないと!」と興奮する状況が2日間続いた。

この方の場合、病棟スタッフが抑制は一切行わず、その都度本人の思いを傾聴し、対応をしていました。

スタッフは大変だったかと思いますが、少しずつせん妄の症状も落ち着いてきているのが明らかだったため、私は「もう1日くらいの辛抱だと思います。このまま抑制はせず頑張りましょう。スタッフが足りない時は私を呼んでください。」と伝え病棟スタッフの行なっているケアを見守りました。

その結果、2日間でせん妄は落ち着き、その後は穏やかに入院生活を送っています。スタッフからも「なんとか抑制せずにできました。」との発言が聞かれたので、「抑制しなかったから長引かず落ち着いたんだと思います。」と強調して伝えました。

私は、せん妄に関しては入院初日〜2日目、3日目あたりがピークかなと個人的には感じています。

一番はせん妄を起こさないよう予防的なケアをすることですが。。。

これは病院全体として取り組まないといけない課題かなと思います。

まだまだ私も経験が足りないので、すごくシンプルな事例しかお話しできませんが、少しでも参考になれば嬉しいです。

これからは時々は、今回のように実際の現場での事例を(アレンジして)紹介しながら、試行錯誤のケアを共有できるといいなと思います。

ではまた♡

今回参考にした本↓

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