ナイチンゲールの「看護覚え書」を読み解く⑤〜「ベッドと寝具類」「陽光」〜

看護

今回は第8章:ベッドと寝具類、第9章:陽光です。

第8章:ベッドと寝具類では、ナイチンゲールは「主として、寝たきりの病人あるいはそれに近い病人のばあいについて」述べています。

そして、発熱した患者のほとんどは寝具類が原因で起こっていると述べています。

第9章:陽光では、ナイチンゲールが看護をしてきた経験から得た動かしようのない結論として「新鮮な空気についで病人が求める二番目のものは、陽光をおいてほかにはない」と述べています。

それでは、具体的に見ていきましょう。

第8章:ベッドと寝具類

寝具類の不衛生が患者の回復過程を妨げる

冒頭でも述べたように、ナイチンゲールは発熱の原因はベッドの不衛生だと述べています。その理由を以下のように述べています。

人間は肺と皮膚から二十四時間にすくなくとも3パイント(1.7リットル)の水分を排泄しており、その水分中には、すぐにも腐敗しはじめる有機物がたっぷりと含まれているのである。しかも病人の身体から発するそれらの水分は、その量がいちじるしく増えることが多く、その質も毒性がきわめて強くなる。では、いったい、これらの水分はどこへ行くのか?そのほとんどは寝具類に吸収されることになる。なぜなら、ほかに行き場がないからである。

フロレンス・ナイチンゲール,看護覚え書ー看護であること看護でないこと,p136,現代社,2017.

すごく納得できる説明だと私は思いました。正直、ここまで考えたことはありませんでした。

人の体から不感蒸泄があることは知識としてはもちろん知っていましたが、それを適切にケアしないとこういうことになるんだと頭の中で繋がっていませんでした。

でも、考えてみれば、お子さんがいらっしゃる方は特にわかるかと思いますが、赤ちゃんのケアをする時を想像してください。自分で体温調節がうまくできない赤ちゃんの場合、私たちが「暑くないかな?」「汗かいてないかな?」「寒くないかな?」と気にかけて調節しますよね?布団も清潔に保つよう意識するかと思います。

入院している患者さんも同じです。体力が低下し、自分で調節ができない状況に加え免疫力も低下しています。つまり、私たちがここまで細やかに配慮してケアしていくことがとても大切ですね。

現在では、週に1回は必ずシーツ交換をしているかと思いますが、それで満足するのではなく常にシーツが湿っていないか、汚れていないかを確認し必要であれば交換するという視点も必要だと思います。また病衣に関しては可能であれば毎日交換することが望ましいと思います。

ベッドの配置と高さ

ベッドの配置に関して、ナイチンゲールは「病人のベッドは室内のいちばん明るい場所に置き、かつ窓から外の見える位置に据える」ことと述べています。

これは現代の病院の構造上、実現することは難しいかと思います。大部屋の場合、窓側に設置できるのは2台のベッドのみという病院が多いのではないでしょうか?でも、理想としてでも頭に置き続けることは大切だと思います。

また、ベッドの高さについても指摘しています。ナイチンゲールは「長椅子よりも高いベッドとなると、ベッドに出入りする疲労度が高まる」と表現しています。自分である程度動ける患者さんに関しては、端座位になったとききちんと足が床についているか確認しておくことは現代でもやっていると思います。転倒予防の観点からもこれは大事なことですね。

ベッドと寝具類の最適な条件

「ベッドと寝具類」の最適な条件について、ナイチンゲールの意見を金井(ナイチンゲール看護研究所所長)は以下のように整理しています。

①掛け物は軽くすること。
②身体の下には絶対に毛布を敷き込まないこと。毛布は湿気を吸収してしまい、褥瘡を作りやすくするからである。
③マットレスは裏返したり、左右を入れ換えたりして使用すること。
④その人に合った適切な枕を使うこと。
⑤枕の当て方を工夫すること。

この条件を見ていて感じたことは、素材の適正などもちゃんと勉強しておかないといけないなということです。どんな素材だったら通気性がよく、かつ保温性があるのか・・・。それを知っていれば、軽くて保温性のあるものはどんな掛け物か、肌さわりもよく通気性の良い素材の枕とはどんなものかと色々工夫することができそうです。もちろん、病院では寝具類は決まったものしかないので、限界はありますが、知識として知っておけば、もし患者さんが自分で準備するといったときにアドバイスができますよね。

話は少しそれますが、病院の寝具類って皆さんはどうですか?私はあまり好きではありません。入院したときに、病院の寝具ではなかなか眠れなくて、結局は家からいつも使用している毛布を持ってきてもらって、それを使っていました。(たった三日間の入院でしたが・・)

きっと患者さんも、こだわりのある方がいるかもしれませんよね。心地よく寝てもらうことが回復過程においてはとても大切だと思うので、ここにあげた最適な条件も考慮しつつ工夫していく努力が求められていると思います。

病人にとって睡眠がいかに大切で、その睡眠の確保のためには良いベッドづくりがいかに必要かを考えるならば、自分の職務のいちばん肝要な部分を《他人の手》などに任せられるものではない。しかしこれが不注意な看護師の手にかかると、いちばん軽くしておかなければならない患者の胸部に毛布を二重にしており重ねて見たり、ぶ厚くて暑ぐるしい毛布を患者の下に敷きこんでみたりする・・・

フロレンス・ナイチンゲール,看護覚え書ー看護であること看護でないことー,p142,現代社,2017.

第9章:陽光

冒頭に述べたように、ナイチンゲールは新鮮な空気の次に陽光が重要であると述べています。

また、「太陽の恵みをいっぱいに受けて、部屋が明るく快適なこと、それは病気の治療に欠かせない条件である」とも述べています。

私たちも経験があるかと思いますが、太陽の光が全く入らない部屋は、空気がカビ臭く、実際に部屋の片隅にカビが生えますよね。

つまり、太陽の光には浄化作用があるということです。

また、人間の心身にも日光を浴びることは様々なメリットがあることがわかっています。金井は以下のように整理しています。

①ビタミンDやヒスタミンの生成
②セロトニン分泌
③サーカディアンリズム調整効果
④温熱効果
⑤殺菌効果

ビタミンDは骨を丈夫にするだけではなく、免疫力をアップさせます。また、ヒスタミンは血管拡張効果を持ち、血液の循環を良くします。さらに、セロトニンに関しては以下のように様々な働きがあります。(参考文献:樺沢紫苑,ブレインメンタル強化大全,p154,サンクチュアリ出版,2020)

セロトニンの働き
①癒し、安らぎ
②感情の安定化
③脳内物質の指揮者
④覚醒をコントロール
⑤集中力、クールな覚醒
⑥自律神経のコントロール
⑦睡眠物質・メラトニンの原料(睡眠を助ける)
⑧痛みのコントロール
⑨姿勢のコントロール
⑩表情のコントロール

私が個人的に「なるほど!」と思った項目は、⑧痛みのコントロールです。高齢者の多くは何かしら「痛み」を訴えます。また、高齢者だけではなく「癌性疼痛」などで苦しんでいる方もいますよね。

痛みに対して内服で対応するだけでは限界があることは、皆さんも日頃感じているかと思います。温めてみたり、手を当ててさすってみたり・・・と色々工夫されているかと思います。ここに、患者さんの調子を見ながら日光浴をさせてあげるということも一つの痛みへのケアとして有効かもしれません。


ここまで、「看護覚え書」を読み進めていて実感していることは、私たち看護師にできることは今以上にあるということです。

機械化が進む中で、私たちはつい機械に頼る癖がついてしまっていて、アセスメントまでも機械に頼りがちになり、ケアに関しても「医師の補助」がメインとなってしまっている傾向があるように思います。

看護の基本は「日常生活支援」。そのエキスパートとして私たちはもっと自覚と誇り、責任を持って看護を提供していくことが必要だなと感じました。

やっぱり看護は奥深い、面白いと思えました。

ではまた明日♡

*お知らせ*

これまで毎朝6時にブログ更新していましたが、4月からフルタイムでの勤務が開始しましたので毎日投稿は難しくなりそうです。できる限り投稿は続けますので、今後も見てくださると嬉しいです♡

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