今回は「看護覚え書」の第4章:物音、第5章:変化についてです。
第3章までは「総論」部分にあたり、看護の基本的なことについて書かれていました。
第4章からは、具体的な看護の展開についての記述となっています。
では早速お勉強していきましょう!
第4章 物音
不必要な物音は患者に害を与える
不必要な物音や、心のなかに何か予感や期待などをかき立てるような物音は、患者に害を与える音である。
フロレンス・ナイチンゲール,看護覚え書ー看護であること看護でないこと,p81,現代社,2017.
ナイチンゲールは、不必要な物音は患者に害を与える、つまりは回復過程を妨げると述べています。
この不必要な物音とは、大きな音とは限りません。例えば、「ドアの外の話し声」「聞き慣れた人の囁き声」などです。
私たちの日頃の病棟での物音、大丈夫でしょうか?
チームラウンドの時、病室を出た直後にチームメンバーで患者さんの話をしたりしていませんか?
業務中、廊下で小声で患者さんの話しをしたりしていませんか?
私は今まで何回か、チームラウンドをしたことがありますが、病室に入る前に部屋の入り口で、話をしたりしていたなぁと反省しました。
今後はナースステーション内で説明をした後にラウンドし、ラウンド後も話し合うことがあればナースステーションで行うということを徹底したいと思いました。
以下に、金井(ナイチンゲール看護研究所所長)の著書にまとめられていた、病人の神経を痛めつける「物音」について記載します。
病人の神経を痛めつける「物音」
①話し声
②不用意なかけ声
③わざとらしい声
④業務中の不必要な音
特に注意するべきことは、②の不用意なかけ声です。例えば、リハビリをしている人の後ろから声をかけるのはNGです。患者が集中しているときに話しかけることは、患者のエネルギーを消耗することにつながります。
また、④業務中の不必要な音について、皆さん思い当たることはありませんか?
カーテンを乱暴に開けたり、足音をバタバタ鳴らしたり、パソコンのキーボードを打つ音が大きかったりしませんか?
私も思い当たることが多くあるのですが、普段から物音をやたらと立てる癖がある人は要注意です。悪気があってやっているわけでもなく、音を立てている本人は無意識なんですが、周りから見るとすごく気になるということがありますよね。
日頃から所作を丁寧にする習慣をつけることも大切なことかもしれません。
不注意な看護師
ナイチンゲールは、第4章の中で、患者を消耗させないように行動することについても述べています。
そして、不注意な看護師の具体的な例を次のように挙げています。
金井の著書から引用します(引用:金井一薫,ナイチンゲールの「看護覚え書」イラスト・図解でよくわかる!,p52,西東社,2014.)
不注意な看護師とは
1.音をたてて動きまわる看護師
2.ドアを乱暴に開けたり、何度も出たり入ったりする看護師
3.ドアや窓のがたつきやきしむ音に関心がない看護師
4.病人を急かしたり、騒々しくかきまわしたりする看護師
5.患者と話すときに、患者の視野のなかに座ろうとしない看護師
6.患者から受けた伝言を何度も繰り返し確認する看護師
7.病人が何かをしている最中に、背後や遠くから話しかける看護師
8.病人の思考を中断させる看護師
9.歩行している患者に付き添いながら会話を求める看護師
10.患者のベッドに寄りかかったり、腰かけたりする看護師
11.自分の考えを簡潔かつ明確に表現しない看護師
いかがでしょうか?いくつ当てはまるかチェックしてみてもいいかもしれませんね。
入院している患者さんというのは、すごく敏感で、不安を抱えているので、私たちが思っている以上に些細なことでもエネルギーを消耗するのだと思います。治療に専念できるよう、私たちの行動によってエネルギーが消耗されないように気をつけることがとても大切ですね。
第5章 変化
変化の必要性
長期にわたってひとつ二つの部屋に閉じ込められ、毎日毎日、同じ壁と同じ天井と同じ周囲の風物とを眺めて暮らすことが、どんなに病人の神経を痛めつけるかは、ほとんど想像もつかないであろう。
フロレンス・ナイチンゲール,看護覚え書ー看護であること看護でないことー,p104,現代社,2017.
入院していない私たちの生活は、毎朝起きて仕事へ行って、帰ってきて、夕ご飯を食べて・・・という風にある程度リズムが決まっていても、その中にはなんらかの変化があるはずです。仕事へ行くまでの景色にしても、雨の日と晴れの日では見え方が違いますよね。また、仕事では毎日単調な仕事ももちろんあると思いますが、そこでの会話などには変化があるかと思います。
このように、生活とは変化があるのが普通であり、私たちは変化があるからこそ生命力が消耗することなく生きていけるのだと思います。
一方、入院している患者さんはどうでしょうか?ずっとベッドに寝かされている患者さん、見える景色は同じですよね。
日中も何もすることがなく、ただただ寝ている・・・。考えただけで気が病んできてエネルギーが消耗するような気がしませんか?
病人の思いに変化を持たせる援助
病人というものは、脚の骨折のときに他人の手を借りないかぎり、脚を動かせないのと同じように、外から変化が与えられないかぎり、自分で自分の気持ちを変えることができない。まったくのところ、これこそ病気についてまわる一つの大きな苦悩なのである。それはちょうど、骨折した四肢にとって一定の肢位を保っていることが最大の苦痛であるのと同じである。
フロレンス・ナイチンゲール,看護覚え書ー看護であること看護でないことー,p108,現代社,2017.
「他人の手」を看護師と捉えると、私たちは患者の気持ちに変化を持たせる援助が求められています。
私たちは普段、身体援助などは行っていますが、患者さんの気持ちに働きかけるという援助はどのくらい行われているでしょうか。
金井は「変化」に対する援助として以下の4つを挙げています。
「変化」への配慮
①陽光が刺すようにする:朝にカーテンを開けて、室内に陽光を取り入れる
②外の景色を見せる:たとえ同じ場所からの景色でも日々見えるものが異なる
③楽しい話を聞かせる:楽しい会話と笑いは苦痛を忘れさせ、免疫力アップにつながる
④色彩に気を配る:明るく美しい色彩は、患者を癒す
いかがですか?どれもちょっとしたことですよね。この少しの配慮が患者さんには大きな変化をもたらします。
今は新型コロナウイルスの影響もあり、景色を見せに行ったりなどできることが限られているかもしれませんが、以前お伝えしたように入院前の患者さんの写真を持ってきてもらうのも、そこから楽しい話題に広がるきっかけとなるかもしれませんね。
また、笑顔についても以前お話ししましたが、「笑顔」で接することは患者さんに絶大な効果をもたらしますし、今からでもできることです。
最後に、ナイチンゲールの厳し〜いお言葉を添えて今回は終わりにしたいと思います。
(看護師は)自分の生活や仕事については、一日に何度も、あれこれ変化をもたせておりながら、寝たきりの病人たちを看護(!)しているというのに、病人の身のまわりに変化をつけて気分転換をはかったりなどまるでせず、ただじっと重苦しい壁面を見つめさせておくのである。
フロレンス・ナイチンゲール,看護覚え書ー看護であること看護でないことー,p108,現代社,2017.
ではまた明日♡
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