ナイチンゲールの「看護覚え書」を読み解く②〜「住居の健康」「小管理」〜

看護

今回はナイチンゲールの「看護覚え書」の第2章:住居の健康と第3章:小管理についてです。

第2章の住居の健康は、第1章の「換気と保温」と重なる部分がありますので、思い出しながら読んでいただけたらと思います。

では早速みていきましょう!

第2章 住居の健康

ナイチンゲールは住居の健康を守るためには、以下の5つの基本的な要点が重要であると述べています。

住居の健康を守る基本的要点
①清浄な空気
②清浄な水
③効果的な排水
④清潔
⑤陽光

現代では当たり前のような項目ですが、ナイチンゲールの時代にはまだ常識ではなかったのです。

衛生状態は悪く、多くの感染症患者がいたそうです。

現代では感染症による死亡率はさほど高くはないにしても、新型コロナウイルスの感染はまだまだ収束の兆しは見えていません。

ナイチンゲールは住居の環境に気を配ることで感染症は防げるものと考えました。

私たちも病室の環境に配慮することで、院内感染を防ぐことにつながるのだと思います。

また、ナイチンゲールはこれらの基本的要点に基づき、感染症を予防することができる病院構造の研究を行い、設計までしたそうです。

ナイチンゲール病棟の特徴
・各階とも、病棟内には仕切りをつけて多くの病室を作らず、フロア全体がひとつの部屋になっている。
・1病棟のベッド数は30床(ナイチンゲールが提案した1病棟のベッド数は20〜32床
・患者一人ひとりに新鮮な空気が行きわたるよう、すべてのベッドを窓際に配置。
・窓が壁の両面にあるので、換気と採光が確保しやすい。

「責任を持つ」とはどういうことか

ナイチンゲールはこの章の中で、責任を持つということについて以下のように述べています。

自分ひとりですべてを実行するという意味ではない。(中略)自分自身で行なわないときにも確実にそれが行われるようにできないものであろうか。あなたがその場を離れたとたんに事態が逆もどりするようなことが、絶対にないようにできないものであろうか。これこそ「責任を持っている」ということの意味なのである。

フロレンス・ナイチンゲール,看護覚え書ー看護であること看護でないことー,p49,現代社,2017.

この点について、特に管理者や認定看護師、専門看護師の方は思い当たることがあるのではないでしょうか?

私はすごくドキッとしました。

確かに、私が「こうした方がいい」と思って一所懸命関わっても、結局それを病棟ケアに落とし込めていないので「私がいなくなったら継続されない」という現状がありました。それでは「責任を持つ」ということにはならないんですね。

どうしたら病棟ケアに落とし込めるのか、そこにはやはり「対話」と「コーチング」が必要なのだと思います。

答えを教えるのではなく、現状のアセスメントを対話によって共有し、コーチングの技術で相手から答えを引き出す。

そうすることで、自分たちのケアとして取り組めるのだと思います。

第3章 小管理

この章では、先ほど述べた「責任を持つ」ことについて細かく述べられています。

患者に対して「このようにケアしよう」ということが決まったとしましょう。

その後、その場にいた看護師ならケアを提供できて、いなかった看護師はできないということがないようにすることが必要です。

そのためには「小管理」が大事であると述べています。

この「覚え書」に詳しく述べている要点にそって、どんなに良い看護を充分に行なったとしても、ひとつのこと〜つまり小管理〜が欠けていれば、言い換えれば「あなたがそこにいるとき自分がすることを、あなたがそこにいないときにも行われるよう対処する方法」を知らないならば、その結果は、すべてが台無しになったり、まるで逆効果になったりしてしまうであろう。」

フロレンス・ナイチンゲール,看護覚え書ー看護であること看護でないことー,p64現代社,2017.

どんなに、献身的な看護師であっても、常時患者のそばにいることは不可能だし、そうであってはいけないとナイチンゲールは述べています。また、それを強制することも望ましくないと述べています。

みんなで適切なケアができるよう、手はずを整える、つまり小管理の能力を身につけることが求められています。

自分がその場にいないときに起こりうることを予測して、そのために誰と何を話し合っておくべきか考え、そうやって手はずを整えていることを患者さんへ伝えることが大事です。

なぜなら、患者さんは自分の困りごとに対して、丁寧に関わってくれた看護師がいない間のことを考えると不安だからです。

つまり、ケアが中断されるようなことは患者へ不安感を募らせてしまうのです。

ナイチンゲールはこのことについて次のように述べています。

およそ患者にとって、気がかり、半信半疑、時間待ち、予感、不意打ちへの不安などによって生じる心身の消耗は、他のどんな消耗よりもはるかに有害なのである。患者はいつも自分の敵と顔をつき合わせていて、内面で戦い、想像上の対話を続けている。

フロレンス・ナイチンゲール,看護覚え書ー看護であること看護でないことー,p69,現代社,2017.

患者さんはただでさえ、病気のことや家のこと、仕事のことなどで不安を抱えて入院生活を送っています。そこに、私たち看護師側がさらなる不安感を与えるようなことがあってはならないと言っているのです。

中途半端に「私がすべてやる」という考えを持つことは、患者さんにとってとても有害なんだと気付かされました。

私も小管理の能力を身につけることが、今後の課題だなぁと感じました。

つい「病棟のスタッフは忙しそうだから言いづらいなぁ」とか「こんなことまでお願いできないよなぁ」という考えが頭をよぎってしまいます。

でも、一番大事なことは「患者さんがいつでも安心して看護を受けられるように」と考えることなんですよね。

今日もナイチンゲールから大切なことを学びました。

学生の頃の習った記憶すらないけれど、今こうやって学び直していることはすごく大事なことだなと思うと同時に、今だからこそ腑に落ちることがあるのだと思います。

ではまた明日♡

これはすごく簡潔にわかりやすく解説されています。↓

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