映画「マイ・インターン」から見るこれからの高齢者像

映画

今回は、私の大好きな映画「マイ・インターン」をご紹介します。

アン・ハサウェイ演じるファッション業界の社長ジュールズと、ロバート・デ・ニーロ演じるシニア・インターンのベン。

この二人が信頼関係を築くまでのストーリーの中に、高齢者ケアのヒント、これからあるべき高齢者像がたくさん描かれていました。

あらすじは以下、公式ホームページより一部引用します。

華やかなファッション業界で成功し、結婚してプライベードも充実、現代女性の理想の人生を送るジュールズ。そんな彼女の部下にシニア・インターンのベンが雇われる。最初は40歳も年上のベンに何かとイラつくジュールズだが、いつしか彼の的確な助言に頼るように・・・。

映画「マイ・インターン」公式サイトより

予告編の動画も是非観てみてください↓

高齢者は社会のお荷物??

これまでの高齢者像と言えば、「年老いて何もできなくなった人」「一人では何もできない人」「人からの世話を受ける人」というイメージかと思います。←ちなみに、この意見は息子(12歳)に聞いたときにも同じ回答でした。(我が息子ながら残念です)

この映画でも女社長ジュールズは最初、シニア・インターンのベンを「どうせ何もできない」と思い、仕事を与えませんでした。

また、シニア・インターンの採用面接をする場面があるのですが、面接官は若い子で、面接を受けているベンに対して「最終学歴は?覚えてます?」という発言をしています。高齢者=物忘れというイメージを象徴している場面です。また、必要以上に大声で話しかけるという場面も見受けられました。これは高齢者=耳が遠いと最初から決めつけて関わっている場面です。

ちなみにWHOでは65歳以上の人を高齢者と定義していますが、今の65歳というと、まだまだこれまでのような一般的なイメージの高齢者とはほぼ遠いのではないでしょうか。

このような現状を受け、2017年には日本老年医学会、日本老年学会のワーキンググループが、高齢者の定義を75歳以上に引き上げようという提言もされています。

実際は75歳でも、まだまだ元気に現役で働いている方もいますよね。

これからの時代は超高齢社会です。これまでのように高齢者をお荷物とする考え方はもう古く、誰にとってもプラスとならない発想です。

高齢者も立派な社会の一員、むしろ、高齢者から多くを学ぶ姿勢を持つという転換期が訪れていることをこの映画は教えてくれています。

定年後も社会から必要とされたいという高齢者の思い

この映画の冒頭では、定年後、妻にも先立たれたベンが、旅行や趣味を持つことをしたり、毎朝同じコーヒーショップへ行き自分の居場所を探したり、様々なことをしているが、何か今ひとつ満足できないという思いが描かれています。

その時に見つけたのがジュールズが経営する会社の「シニア・インターン」の募集広告でした。

ベンは「自分もまだまだ活躍できる!」と信じて行動に出たのです。

きっと多くの高齢者、特に仕事をずっとしてきた場合は、退職することによる喪失体験を乗り越えるために必死なのだと思います。

ベンのように自分でそれができる場合はまだいいのですが、中にはそれを乗り越えるには周りのサポートが必要な人もいるかもしれません。そこを支援するのも高齢者ケアの役割なのだと思います。

また、この映画を観た時に「シニア・インターン」というシステムがあるなんて素晴らしいと思いました。

現在、そのようなシステムを持っている会社ってどのくらいあるんでしょう・・・?最近では増えて来ているのかもしれませんね。

ちなみに私が働いている病院には65歳で退職となったあと「再雇用」という制度がありますが、あまりその人たちの持っている能力が生かされているとは正直思えません。

高齢になっても人は「必要とされたい」という思いを持っているし、その思いを満たすことで自己効力感も高まり、日々の生活に張り合いが出てくるのだと思います。

人は生きる張り合いがなくなると、徐々に活力が低下し、しまいには身体機能も低下し寝たきりになります。

高齢者医療費の高騰などの問題がありますが、それを解決する方法の一つは、高齢者をただの医療・介護の受け手としない世の中にすることだと思います。そのためには、経済活動の担い手として高齢者がもっともっと活躍する場を作っていくことが必要ではないかと思います。

高齢者自身も努力が必要

映画の中で、ベンは最初、ジュールズから仕事を与えられず毎日会社に行くけれど何もしない日々を過ごしていました。

しかしベンは「毎日行くところがあるだけありがたい」と思い直し、「行動あるのみ」と自分にできることを始めます。

スタッフが困っている場面に積極的に関わり自分の経験からアドバスをしたり、自分よりもはるかに若いスタッフの恋の悩み事を聞いたり・・・。最終的にジュールズの心を開いた瞬間は、ジュールズがずっと気になっていたけれどどうにもできなかった、ごちゃごちゃの机の上をベンが片付けたことでした。

こうやってベンは周囲からの信頼と、自分の上司であるジュールズの信頼を勝ち取ったのです。

その後は、ジュールズは事あるごとにベンを頼りにし意見を求めます。そのときもベンは、すぐに答えを言うのではなく黙って話を聞き、ジュールズの思いを引き出し、ジュールズが自分自身で決断できるようサポートしていきます。

まさに傾聴のスキルと、コーチングです。(※コーチングについては過去記事参照)

高齢者だからこそ、どんなときでも穏やかに余裕のある関わりができるのだろうと思います。

もう一つ、ベンが素晴らしいのは、積極的に若いスタッフたちに交わり、Facebookを始めたりと若い世代がやっていることを否定せずにまずはチャレンジする姿勢です。

このように、高齢者自身も「自分は何もできない」と嘆くのではなく、「まだまだできることがある」と思い続けることが必要なのかもしれません。

そこをサポートするのが高齢者ケアの重要な役割なのだと思います。たとえ身体的に介護が必要であっても、その人にしかできないことがあるということを引き出し、精神的にもサポートすることが必要だと思います。

今回は、上記3点についてお伝えしましたが、映画の中にはベンの規則正しい生活を送る姿や、身だしなみをきちんとする姿など、高齢者ならではの姿が描かれていて、人生の大先輩として見習うべき点が多くあります。

まだ映画を観ていない人はぜひ観てください。

高齢者ケアという視点だけではなく、ジュールズの女性としての生き方や、ファッションを見るだけでも楽しく学びになります。

映画ってこうやっていろんな視点から観ると、より楽しいんだなーと初めて思った作品です。

これからも時々、映画を題材にして高齢者ケアについて語りたいなと思っています。

ではまた明日♡

コメント

  1. ちゃー より:

    受け持ちの患者さんに90歳代の方がいるのですが、私は初対面の時に、良かれと思い耳元で大きな声で自己紹介すると、患者さんが、嫌な顔して、みんなが耳遠いと思うな、私はこんなされるのが一番嫌い、、ってお叱りを受けました。典型的な高齢者=耳が遠いって、思い込んでいた自分にハッとしました。ダメですね、、

    • hanako より:

      ちゃーさん

      その患者さんが、はっきり伝えてくれてよかったですね^^
      素敵なお方。
      でも、ついつい大声で話しちゃいますよね。
      高齢者は、「やや低めでゆっくり話す声」が聞き取りやすいそうです。

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