患者中心の医療って結局はどういうこと?

対人援助

今回のテーマは「患者中心の医療」についてです。

この言葉、医療者なら必ず耳にしたことがあるかと思います。

病院の理念に掲げているところも多いんじゃないでしょうか?

でも実際に、具現化できているかと言われたらどうでしょうか。

私も考えてみたら具体的にイメージできていなかったなぁと思いました。

やっとわかりやすく明確に書かれている本に出会いました。

「対話する医療 人間全体を診て癒すために」(孫大輔著)です。

主に医師ー患者間について「対話」が重要であるということが述べられていますが、看護師としてそこにどう関わったらいいのかということを考えながら読み進めてみました。

「患者中心の医療の方法」の四要素

著者は「患者中心の医療の方法」の具体的な実践には以下の4つの要素が必要だと述べています。

一つずつ解説をしていきます。

1.健康・疾患・病いの経験を探る

まず「健康」についてですが、「健康」とは単に病気がない状態ではなく、人の健康を支えるものが重要な役割を果たしていると著者は述べています。その人の健康を支えているものとは、人によって違います。生活する中での楽しみだったり、生きがいと思えることだったり、人生の幸福感を支えるものです。その人の健康には何が欠かせないのかそこを知ることがポイントです。

次に、疾患・病いという言葉がありますが、この2つの言葉は何が違うのか。

実は病気には2つの捉え方があると言われています。それは「疾患(Disease)」と「病い(Illness)」です。

「疾患」とは簡単に言うと医療者側から見た医学的な病気の捉え方です。一方、「病い」と言った場合は、患者さん側から見た捉え方です。つまり、患者さん個人の主観的な苦しみや経験全体のことを指しています。

ポイントは「病い」の経験を探ることです。そのためには具体的にどのような声かけをしたら良いのか。本書では「この病気について、どんなことを感じているか、何でも話してもらえますか?」という例があげられていました。

残念なことにこのように聞く医者に私は出会ったことがありませんが・・・。

医師には診察にかけられる時間に限りがありますよね。私たち看護師も日々忙しいのに変わりはありませんが、どの医療従事者よりも長く患者さんの側にいる存在だと思います。

この視点を意識して日々関わることで、きっと見えるものが違ってくると思います。そしてそこから見えた景色は是非主治医と共有してほしいなと思います。

2.患者を全人的に捉える

患者さんをみていくときの視点にも2つあります。

一つは、医学的視点で「臓器→組織→遺伝子」とズームインするようにみていく視点です。

もう一つは、医学的視点とは異なり、「家族→社会→地域→文化」とズームアウトしていくようにみていく視点です。

患者さんをみるとき、患者さんの後ろにある家族、社会・・・など、患者さんからズームアウトしてその背景をみていくことが全人的に理解するということです。

この全人的視点は、看護師が患者さんをアセスメントするときにもとても重要だと思います。

医師の診察ではなかなか聞き出せないことも、看護師として日々関わっているときに、家族のことを聞いてみたり、社会的にどういう役割を持った人だったのか話を聞いてみたり、どんな地域に住んでいるのかを話題にしたり、どのような文化を持っているのかについて話をしてみるといいかもしれません。

そこで得た情報を少しずつつなぎ合わせることで患者さんの全体像が見えてくると思います。

3.共通の理解基盤を形成する

「共通の理解基盤」とは、どんな問題に焦点を当てるのか、何をゴール(目標)とするのか、患者と医師のお互いの役割は何か、という「問題・目標・役割」の3つです。

特に問題の共有は一番重要です。例えば血糖値が高く、肥満のAさんがいたとしましょう。

医師は「血糖値が高い」ことを問題として捉えていましたが、Aさん本人はそれを重要な問題として捉えていません。そうなると「内服治療を開始するかどうか」という話も進みません。

Aさんが困っていたのは「倦怠感」でした。そこで、問題の焦点を「肥満(と倦怠感)」にあてることにします。Aさんへ肥満は血糖にも関係しているし、倦怠感の原因にもなっていることを説明するのです。

このように、患者さんが困っていることと、医学的に問題となっていることのすり合わせを行い、双方が共有できる問題に焦点を当てることがポイントです。

問題の共有ができれば、あとは目標を設定し、その目標を達成するために医師としての役割、患者としての役割(患者が頑張ること)を決め、お互いでそれを確認します。

入院している患者さん、特に入退院を繰り返している患者さんの場合、多くは問題の共有がなされていないのだと思います。

患者さんは生活を送る上で何に困っているのか、その困りごとと病気にどのような関連性があるのか、そこをアセスメントしていくことは看護師としてとても大切な役割だと思います。

4.患者ー医師関係を強化する

患者と医師の良好な関係性は「ラポール」と呼ばれます。簡単に言えば「信頼関係」です。

患者との信頼関係を築くにはまず医療者側の誠実な態度、傾聴と共感、思いやりの態度が重要です。

このことについては過去記事(「相手から信頼されたい」は傲慢?!)を参照してください。

以上4つの要素についてお話ししました。

この4つの要素全てにおいて「対話」が欠かせません。患者さんとの対話はもちろん、医療者間でも対話を重ねないことには情報の共有はできません。

今後、「対話」についてもテーマとして取り上げてみたいと考えています。←私もまだ勉強中です。

患者中心の医療の実現に向けて自分にできることから始めてみたいですね。

ではまた明日♡

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