今回は、対人援助についてのお話です。
私が参考にした本は「ケアを生み出す力(佐藤俊一著)」です。
最初にみなさんに質問です。本書の中で、著者が問いかけていた場面を引用しますのでみなさんも考えて見てください。
私は、この数年間、いろいろな研修場面で、「あなたが信頼関係ということばを思い浮かべるのは、相手から信頼されたいときですか、それとも相手を信頼したいときですか」と質問している。信頼関係だから、基本的には双方向であるが、どちらかに区別して手をあげてもらっている。どこで質問しても、圧倒的に多くが「信頼されたいとき」という答えになる。(中略)信頼されれば援助はうまくいくと考え、そのために信頼される専門職になりたいと思っているのである。(中略)実はとても傲慢な発想である。
佐藤俊一,ケアを生み出す力,傾聴から対話的関係へ,p29-30,川島書店,2011.
どうですか?私はこの質問に多くの人と同じ「信頼されたい」という考えでした。
著者は、信頼されたいと思うのなら、まずは自分が相手を信頼するべきだと述べています。
頭ではわかっていたつもりですが、実際はそれが難しいんですよね。
ケアの場面に関わらず、相手を信頼するってできているようで意外とできていないのではと思ってしまいました。
具体的にどうすることが相手を信頼することになるのでしょうか?
以下、私がこの本を読んで相手を信頼するってつまりこういうことではないか?と考えたことを整理していきます。
「自分を使う」ことで相手を信頼する
この本では一貫して「自分を使う」ということが述べられています。
「自分を使う」とはどういうことでしょうか?以下に、箇条書きで述べてみます。
- できていない自分を表す
- 自分を護らない
- 頭で考えて迷惑をかけないようにするのではなく、素直に自分を相手に預けてみる
- 生き生きとなれる
- 自分へ自由になる
上記の中で、あなたはいくつチェックがつきましたか?
私は・・・一つもつきませんでした!!自分でびっくり・・・。
専門職として、患者さんの前では凛とした態度で接しないといけないと思っていたし、わからないことがある自分を許せなかったし、専門看護師だからこうでなくてはいけないと自分を枠にはめ込んでいました。
著者は、自分を使うことができない人は「持つこと」で安心するとも述べています。どういうことかというと、専門職はたくさんの知識や技術が必要で多くそれを持つことで、安心したいという態度になりがちなんだそうです。→まさに私のこと。
相手を信頼するとは、つまり相手に対し「自分を使う」ということ。簡単に言うと弱さも含めて自分をさらけ出すという感覚と近いでしょうか。
「今、ここで」の関係を大事にする
ケアでは傾聴が大事ということはよく言われていますが、著者は「傾聴から対話的関係へ」と発展させることが重要であることを述べています。
そして、対話的関係になるためには「自分を使う」だけではなく、「今、ここで」の関係を大事にすることが必要だと述べています。
私は急性期病院で勤務していますが、よくある光景として「入院時にはもうすでに退院時のことを視野に入れて患者さんや家族に話をする」という場面です。
もちろんそれはとても重要なことであることに違いはありません。
ただ、「今、ここで」の患者さん、家族のことばに耳を傾け対話をしていることが前提として必要なのだと思います。
確かに、私も一度だけ入院の経験がありますが、入院時って本当に体調が今までの人生で最悪の状態なんですよね。。。そんなときはまず「今の自分のことを聞いてほしい」と思ったものです。
過去でもなく、未来でもなく「今、この瞬間」を一緒に共有してほしいなと。
病院には役割があり、退院促進などをしなければならない状況が生じているのが現状ですが、私たちは看護師としてまずは「今、ここで」の関係に焦点を当ててみませんか?
「ぎこちなさ」を共有する
「今、ここで」の関係において「自分を使う」という話をこれまでしてきましたが、最後は「ぎこちなさ」を共有するということについてです。
「今、ここで」患者さんと対面し、自分の弱さも含め、相手と対峙したとき「ぎこちなさ」が生じるのはイメージできますか?
例えば、患者さんの状況に自分がどう接したらいいのか悩む場面です。「えっ?こんなときどうしたらいいんだろう?」と思っているときってだいたい「ぎこちなさ」が生じていると思います。
著者はこの「ぎこちなさ」がとても大切で、それがあるからこそ患者さんと私たちがお互いに真剣になって動き始めるのだと述べています。
そうすることが「共にいる」ということだと。→過去記事も参考にしてください。
苦しいときを共に過ごし、その中で信頼関係が構築されるというイメージでしょうか。
今回はちょっと難しい内容でした。
実は私はこの本を4回ほど読みましたが、未だに理解できている気がしません。
でもこの本はすごく大事なことが書かれているということは分かります。
皆さんもぜひ読んでみてください!!一緒に学ぶ仲間がいると嬉しいです。
ではまた明日♡
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